曲目解説
イーハトーヴ・リコーダー合奏団公演「星の国の音楽会」のプログラム10の曲目解説です。

10.及川茂編曲

  1. 作曲者不詳/『黎明行進歌』
  2. 宮澤賢治作曲/『イギリス海岸の歌』
  3. 宮澤賢治作曲/『月夜のでんしんばしら』

 最後の3曲についての関連性は特にありませんが、いづれも楽しい曲です。

 1曲目の『黎明(れいめい)行進歌』の原曲は第一高等学校の第18回記念祭に際して卒業生からの寄贈歌『紫淡くたそがるゝ』であるとされています。

★歌詞
蛇紋(じゃもん)山地の赤きそら 雲すみやかに過ぎ行きて
夢死(むし)とわらはん田園の 黎明いまは果てんとす。
銹びし五日の金の鎌 かの山陵(さんりょう)に落ち行きて
われらが犂(すき)の燦転(さんてん)と 朝日の酒は地に充てり。
起てわが気圏の戦士らよ 暁(あかつき)すでにやぶれしを
いま角礫のあれつちに リンデの種子をわが播かん。
とりいれの日は遠からず 微風緑樹の荘厳と
禾穀(くわこく)の浪はきららかに 歓呼は天も応へなん。
ふるふ地平の紺の上 広き肩なすはらからよ
げに辛酸のしろびかり になひてともに過ぎ行かん。

 このような歌詞を付け、賢治は生徒達と楽しく歌いながら岩手山の登山をしたと言われています。

 2曲目は『イギリス海岸の歌』です。「イギリス海岸」は花巻市の中央を流れる北上川川縁の岩盤の露出した場所をイギリスの海岸に多く見られる地質と同様であるということから賢治が名付けた訳ですが、今ではすっかり観光地になってしまいました。 運良く川の水かさが少ないときに巡り会えばその美しい岩盤を見ることが出来ます。

★歌詞
Tertiary(第三紀)the younger Tertiary the younger mudstone
あをじろ干割れ あをじろ干割れ あをじろ干割れにおれのかげ。
Tertiary the younger tertiary the younger Tertiary the younger mudstone
なみはあをざめ支流はそそぎ たしかにここは修羅のなぎさ。

 賢治は小船を北上川に浮かべ、りんごを何度も何度も川の中に落とし入れ「きれいだ、きれいだ」とつぶやいたそうです。 また、野外授業と称し様々な場所に出掛けたそうですが、きっとイギリス海岸に来たときにはみんなでこの歌を唄ったのでしょう。

 最後の曲『月夜のでんしんばしら』は同名の童話の中で「でんしんばしら」達が列を作って行進をして来るときに歌われる軍歌調の歌です。 童話『月夜のでんしんばしら』は恭一少年と電信柱の行進、そして電信柱達を統括する電気総長との不思議な出会いの物語です。 ある晩、恭一少年が線路の横を歩いていると電信柱の列が北の方へ向かって歩き出しました。 電信柱達は行進をしながら軍歌を歌い出しました。

★歌詞
ドツテテドツテテドツテテド でんしんばしらのぐんたいは はやさせかいにたぐひなし
ドツテテドツテテドツテテド でんしんばしらのぐんたいは きりつせかいにならびなし。
ドツテテドツテテドツテテド 二本うで木の工兵隊 六本うで木の竜騎兵
ドツテテドツテテドツテテド いちれつ一万五千人 はりがねかたくむすびたり。
ドツテテドツテテドツテテド やりをかざれるとたん帽 すねははしらのごとくなり
ドツテテドツテテドツテテド 肩にかけたるエボレット 重きつとめをしめすなり。
ドツテテドツテテドツテテド 寒さはだへをつんざくも などて腕木をおろすべき
ドツテテドツテテドツテテド 暑さ硫黄をとかすとも いかでおとさんエボレット。
ドツテテドツテテドツテテド 右とひだりのサアベルは たぐひもあらぬ細身なり
ドツテテドツテテドツテテド タールを塗れるなが靴の 歩はばは三百六十尺。
ドツテテドツテテドツテテド でんしんばしらのぐんたいの その名せかいにとゞろけり。


プログラム1〜3解説
プログラム4〜6解説
プログラム7〜9解説
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